意味を知ると、結婚式は変わる。~ 想いを抱きしめる一日のつくり方 ~

jan 01, 2026 / Column

新年が近づくと、「来年の抱負は?」と聞かれることが増えます。

けれど正直に言うと、やること自体は、きっと変わりません。
新しいことを始める、というより、これまで大切にしてきたことを、
より深く、より丁寧に続けていく一年になると思っています。

私には、ずっと変えずに持ち続けている想いがあります。
それは、
結婚式を「軽くしたくない」ということ。

派手にしろ、とは言っていません。
高額にしろ、とも思っていません。
やりたくない演出を、無理にやる必要もない。

でも、
意味を知らないまま、形だけをなぞる結婚式にはしたくない。
それだけは、35年以上この仕事に携わってきて、
一度も揺らいだことがありません。

和装人前式で行う
「水合わせの儀」「大盃の儀」や「九重の盃」「屋移りの儀」

これらは、私が現場で生み出し、育ててきた儀式です。
今では全国で使われるようになり、
インターネットで検索すると、
本来とは違う意味で説明されていることもあります。

それを見るたびに、少しだけ、胸がざわつきます。

私は、長年ブライダルの現場に立ち、そして一人の娘として、妻として、母として、
昭和の時代から続く婚礼の中にある「子どもの幸せを願う親の心」を、
体験として知ってきました。

だからこそ、必ず説明します。

「この儀式には、こういう意味があるんですよ」
「これは、親から子へ託す想いなんです」

そう伝えると、
多くのカップルがこう言います。

「へぇ……そういう意味があったんですね」

「覚悟、怖っ!」など(笑)

でもその瞬間、空気が変わるのです。

結婚式が、
「やるもの」から「引き受けるもの」へと変わる瞬間です。

ケーキ入刀も同じです。
ただの写真映えのためではありません。

「そもそも、なぜケーキを切るのか」
「その始まりは何だったのか」

そこをきちんと説明した上で、
「じゃあ、おふたりはどうしますか?」と問いかけます。

答えは、人それぞれ。
でも、考えて選ぶというプロセスが、
結婚を「自分ごと」にしてくれるのです。

最近は、親御さんにアンケートをお送りし、ご記入いただき返送していただきます。
その想いを手紙のように整え、司会が代読する演出を行っています。

私はこれを
「ペアレンツラブ」と名付けました。「親の愛」です。

親は、多くを語りませんし、結婚式中に語るシーンもありません。
でも文字にすると、不器用で、まっすぐで、深い愛が溢れてきます。

その声を先に届けてから、新婦の手紙へとつなぐ。

これは感動を作るための演出ではなく、
世代と世代をつなぐ時間だと、私は思っています。

人前式の誓いの言葉も、変えました。
今、巷で行われている形式は使いません。

出会った頃のこと
第一印象
相手の好きなところ
それを守るために、何をするのか
これからの生活
大切なあなたのために、自分はどう在るのか

それらを手紙にして、お互いに読み合う。

私はこれをExchange of Vows と名付けました。誓いの交換です。

誓いも感謝の手紙も相互関係がありますので、ちゃんと行き来させたいなと。

ただありきたりな誓いの言葉を読むのではなく、贈り合う誓い。

ハミングバードの人前式は、指輪の交換以外、ほぼオリジナルです。
(発祥の地の看板、立てたいくらいですが…笑)

私は、演出を売っているのではありません。
想いの“翻訳者”でありたいと思っています。

結婚は、ふたりだけのものではありません。

親の祈りがあり、家族の歴史があり、
たくさんの人の想いの上に成り立っています。

そのすべてを抱きしめて、
「結婚する」ということを、自分たちの言葉で引き受けてほしい。

来年も、私はこの仕事を、静かに、全力で続けます。

小さくてもいい。
派手じゃなくていい。
でも、ちゃんとやろう。

それが、ハミングバードの結婚式です。